掲載日 : [2004-07-14] 照会数 : 5113
サッカー韓国代表 W杯躍進へ熱血監督(04.7.14)
[ オランダ人ボンフレール氏 ] [ 韓国代表に復帰した李東国。10日のバーレーン戦でゴールを決めた ]
強気の攻撃型戦法
アジアカップが試金石
世界中を驚愕させた2002年サッカーW杯から2年。アジア初のベスト4進出を果たした韓国代表が、06年W杯に向けて新しく船出する。
チームの指揮を取るのは、ヨハネス・ボンフレール。去る6月24日に韓国代表の舵取りを任された新監督だ。
コエリョ前監督は「KFA(韓国サッカー協会)との合意のもとで契約を解除することになった」としたが、実質的には解任更迭だ。ヒディンクの後任として期待を集めていたコエリョだが、その成績は9勝6敗3分けと振るわなかった。
昨年12月の東アジア選手権を制し、今年2月から始まった06年ドイツW杯アジア一次予選でもグループ首位に立つものの、昨年のアジアカップ予選ではベトナム、オマーンら格下に連敗。3月31日のW杯予選ではFIFAランク142位のモルディブに引き分ける失態を演じた。成績不振を責められるのも当然だった。
このコエリョ解任で、KFAは新監督選びを開始。KFAは当初、02年W杯でセネガル代表を率いたフランス人監督ブルーノ・メツを招聘しようとしたが頓挫してしまう。中東のアル・アインの監督職にあるメツを招聘するとなれば莫大な違約金を支払わねばず、メツも高額の契約金を要求してきたことが白紙撤回の原因。しかも、コエリョ解任以降、監督代行を務めた朴成華コーチも辞任し、韓国代表は指揮官不在に陥ってしまった。
そうした中で就任したのがヒディンクと同じオランダ人のボンフレール。96年アトランタ五輪でナイジェリア代表を金メダルに導き、カタール代表やUAEのクラブチームを率いた58歳の指揮官なのだ。
候補リストにまったくなかった人選だけにマスコミは驚いたが、6月中旬に極秘裏に渡欧して交渉にあたったKFAの賈三鉉国際局長によると、KFAがボンフレールと接触したのは今回が初めてではなかったらしい。
「実はヒディンクを招聘した00年末にもボンフレールは監督候補のひとりだった。ヒディンクの後任を論議した02年12月にも接触対象だった」。
今回も前ノルウェー代表監督のニルス・ヨンセン、前チェコ代表監督のジョセフ・コラネッチとも接触したが、KFAはナイジェリアや中東での実績を高く評価してボンフレールに白羽の矢を立てたという。
李会澤技術委員長も、「困難な環境を克服して結果を出してきた彼のカリスマとリーダーシップを評価した」と選考理由を語っている。しかし、彼の母国オランダでの評判は少し違う。
元韓国代表テクニカルアナリストのヤン・ロルプスは、「ヒディンクが一流なら、ボンフレールは三流」と一蹴。実際、アトランタ五輪以降のボンフレールは、成績よりも協会やメディアとの衝突で話題になることが多く、敗因を選手になすりつけたこともある。スピードと体力を重んじる攻撃サッカーを標榜するが、最近はトラブルメーカーとしてのほうが有名だ。
だが、ヒディンクと同年齢でオランダのコーチ養成所でも同期だったというボンフレールは、まったく意に介さない。
就任会見でもキッパリ言い放った。
「私はアフリカや中東で仕事をしてきたのでオランダ人は私のことをよく知らない。それに、自信がなければ韓国代表監督職は引き受けない。魅力的で攻撃的なサッカーを目指す」。
そのボンフレール監督は就任初日からハードな練習を韓国選手たちに課し、厳しい叱責もいとわない。その指導法は〞熱血漢〟〞野戦司令官〟と評されており、韓国代表FW薛鉉もその厳しさに舌を巻いている。
「指導方法はヒディンク監督とよく似ているけど、練習の厳しさはヒディンク監督以上かもしれない。ミスを見逃さないし、失敗に対して厳しく叱咤されるのでチームの雰囲気も引き締まる。緊張感がありますよ」
7月10日にはバーレーン代表を相手に、韓国代表監督として初采配を執り、2―0と快勝した。02年W杯以降、不振続きだった韓国は、ボンフレール監督のもと、新しいスタートを切ったのだ。
ボンフレールが初めて挑む国際大会が、7月17日から中国で行われるアジアカップだ。マスコミやファンが「ボンフレール韓国」の躍進を期待しているのは、言うまでもない。
もっとも、アジアカップを勝ち抜くのは簡単ではない。韓国のアジアカップ優勝は56年と60年の2回のみ。40年以上もアジア王座から遠ざかっている。前回00年レバノン大会は3位に終わった。
しかも、今回のグループリーグは、ヨルダン(19日)、UAE(23日)、クウェート(27日)と苦手にしている中東勢だ。30日からの決勝トーナメンナトではさらに厳しい戦いがが予想される。
それだけに期待したいのは、結果よりも内容だ。アジアカップはボンフレール監督にとって、韓国代表やアジアサッカーの情報を収集できる場所となり、選手たちにとってもボンフレールの目指すサッカースタイルを吸収できる絶好の機会となるからだ。そして、そのアジアカップで得た成果と収穫を、秋から本格化するドイツW杯アジア予選に生かしてほしい。つまり、アジアカップはドイツW杯に向けた本格的な第一歩でもあるのだ。
果してボンフレール韓国はどんな成長を遂げていくのか。その挑戦に熱視線を送りたい。
(慎武宏・スポーツライター)
(2004.7.14 民団新聞)