掲載日 : [2004-07-21] 照会数 : 5498
<Special Wide>在日同胞つなぐボウリング(04.7.21)
[ 投球フォームも絵になるアボジボウラーたちの勇姿(愛知) ] [ プレーの後は楽しい懇親会で交流(東京) ]
安価で気軽 スポーツ交流 新たなテコ
80年代の初頭、日本全国にボウリングブームが沸き起こったのを覚えているだろうか。中山律子に象徴される女子プロの華麗なフォームから繰り出されるストライクは多くの者を魅了し、雨後の筍のように各地に出現したボウリング場は活況を呈した。やがてブームは終わり、ボウリングは青春の1ページのように過去の物になった。と思いきや、在日社会では気軽に楽しめる同胞交流のスポーツとして地域に定着し、拡大しつつあったのだ。口火は愛知が切った。
愛知が火ぶた切る
愛知県に本部を置く体育会中北本部の金南守常任顧問は、会長に就任した99年当時、オリニからお年寄りまで3世代が楽しめる企画は何か、地域の同胞社会を活性化するにはどうすればいいか、思い悩んだ。
出てきた答がボウリングだった。もともと愛知は韓国人大運動会などスポーツが盛んだ。しかし、雨には勝てない。その点ボウリングは、天候に左右されず、大掛かりな準備も必要ない。さっそく県下の民団14支部に声をかけ、支部単位での競技が始まった。各支部の優勝者は支部対抗の県大会に出場し、そこで好成績を収めれば韓国の国体に出場する切符を得る。今では毎年3〜4人が出場するほどになり、国体を目標に掲げて練習に励む人もいるという。
中北本部の大会は、個人戦のほかに14歳以下、39歳以下、59歳以下、60歳以上のクラスがある。各支部に協賛金2万円を出しているため、競技者の自己負担は1500円程度。子どもが参加するから親も参加し、ハラボジ、ハルモニも声援を送る。勝負事に人一倍熱中する韓国人の気質からすれば、ボウリング場の熱気、騒々しさは容易に想像できる。
ボウリングは同胞と同胞との間をつなぎ、若い世代や子どもたちが民団や在日に対する認識を新たにする。たかがスポーツ、されどスポーツ。世代を越えた交流で団費が集まりやすくなったというおまけまでつく。
「根気よく続けることが大事。一つのボールからいろんな可能性が生まれる」と、昨年の大会で個人戦と60歳以上の部で優勝した河文洙副会長は語る。「様々なスポーツで頭角を現す同胞のアスリートがもっといるはず。民団新聞にスポーツコーナーを設けてほしい」。
継承したのは福岡
中北本部の成功をモデルに開催したのが体育会の九州本部だ。01年の初回に100人を集めて以来、130人、160人と着実に参加者が増えている。7月11日に開いた今年の大会には190人が集まった。誰にもできる親しみやすさと弁当付きで参加費1000円というのも人気の理由かもしれない。
九州本部では、競技参加者がダブらないように、団体戦、個人戦、年齢別で試合を行う。ガーターがない子どもレーンも完備され、ストライクが出れば、子どもは喜び、大人も満面の笑みがこぼれる。応援団も活気づく。優勝すると支部が盛り上がり、活性化の一つの起爆剤になる。成績上位者だけでなく、参加者の3分の2に賞品が行き渡るような配慮も忘れない。15歳以下にはもれなく参加賞が渡される。
「回を重ねることで層が厚くなった」と呉政夫会長。今では月に1回程度数人で練習するグループもある。マイボールを持っている人もいる。
とはいえ、課題もある。九州大会と言ってはいるものの、実際の参加は福岡の民団10数支部だけなのだ。
昨年の大会後に各県に案内を出し、地協会議でも参加を促したが、今年は実を結ばなかった。だが、初めて金栄昭総領事が参加し、差し入れもあった。
成人式には若い人の参加が少なくなったが、ボウリングには出てくる。民団とはあまり縁のなかった同胞も集まる。「そのチャンスを生かし、次の行事につなげていく。ボウリングで地域の団員交流のムードが高まれば」と呉会長。「中央団長杯、大使杯と銘打って中央レベルでも始めれば、波及効果はあるし、民団の求心力も高まるだろう」と結んだ。
東京進出で全国へ
愛知、福岡に続いたのが東京だ。7月17日に「第1回民団東京本部団長杯支部対抗ボウリング大会」をロッテ会館で開催した。参加者の最年少は生後4カ月の双子、最高齢は81歳。180人もの同胞らが集まり、青年会東京本部(高幸伯会長)が運営にあたった。
李時香団長は、「3支部しか稼働していない青年会をどう活性化するかが課題だった。10支部を目標に次世代を担う若者たちが集まりやすい環境をつくりたい」と組織活性化に意欲を示し、支部ごとに大会を開く計画だという。
最高齢の参加者、江東支部の金甲龍さん(81)は、「年齢にこだわらずに、若い人とボウリングができるのはうれしい。年をとったからといって家にこもる必要はない」と闊達ぶりをアピール。板橋支部の尹康赫君(7)は「ボウリングだからやって来た」。医療技師で青年会群馬県本部から参加した朴玉淳さん(28)は、「超楽しい。こういう集まりが青年会になかったので参加してよかった」と喜ぶ。
江戸川支部の金春植支団長(58)も「団員と一緒にみんなで無邪気に応援をした。一体感が生まれ、支部の結束が深まると感じた」と確かな手応えを得たようだ。団体戦優勝の豊島支部、朴泰錫副団長(55)は、「感無量。1回目が盛況だったので今後も続けてほしい」と早くも次回開催に期待する。
「ふれあい体育広場」を各地で開催している在日本大韓体育会中央本部の許寧太会長は、「スポーツを通じて老若男女、各世代の同胞が交流するなかから新しいエネルギーが生まれてくる。体育会としても波及効果を最大限引き出すよう努力したい」と全国化する動きに関心を示した。
(2004.7.21 民団新聞)