東京・神保町の韓国専門ブックカフェ「チェッコリ」が、オープンから1年半を迎えた。「チェッコリ」は、日本で韓国関連書籍を出版してきたクオン代表の金承福さんが、韓国の本を気軽に手にしてほしいと立ち上げた。店内には多分野にわたる韓国語の原書や日本語の韓国関連本が並んでいる。有名作家による講演会や朗読会などの韓国関連イベントは、1年間で110回を数えた。これまでイベント参加者と来店者は合わせて約4000人にもなるという。日本でも韓国書籍への関心が高まっている。「チェッコリ」火曜店長の古川綾子さんに、お薦めの書籍を紹介してもらった。
<絵本>
天女銭湯 韓国で最も注目されている絵本作家、ぺク・ヒナさんの代表作。
少女ドッチの住む町には、古い銭湯がある。友だちはみんな、新しいスパランドに行くけれど、ドッチは大好きな水風呂と、あかすりのあとに買ってもらえるヤクルトを楽しみに今日も長寿湯に通う。大好きな水風呂で遊んでいると、羽衣をなくしたという天女が現れる。軽快な関西弁の訳にも注目したい。
著者/ペク・ヒナ
韓国語版=発行元/チェクインヌンコム
定価2376円(税込)
日本語版=ブロンズ新社
訳/長谷川義史
定価1400円+税
<童話>
ソクラテスのいるサッカー部 韓国で人気の児童書「はじめて読むじんぶん童話シリーズ」(全5巻、翻訳)。
第5巻は『ソクラテスのいるサッカー部』。
世界的なサッカー選手になりたいトンヨン。練習が上手くいかなければ新しいスパイクとサッカーボールを買って気分転換する。ある日、サッカー部の監督として現れたソクラテス。トンヨンは本当の実力を身につける方法、みんなと一緒にするサッカーを学んでゆく。
文/キム・ハウン
絵/ユ・ジュンジェ
解説/チョ・グァンジェ
訳/崔真碩
発行元/彩流社
定価1850円+税(各巻)。
韓国語版=発行元/ジュニアキムヨンサ
定価2052円(税込)
シェイクスピアのいる文房具店 第4巻は『シェイクスピアのいる文房具店』。
父親が仕事をなくして笑いが途絶えてしまったビンナムの家族。そんな家庭の事情に加えて友だちの悩みも抱えていたビンナムが、シェイクスピアと親しくなって困難な状況を乗りこえ、夢をかなえていく。
文/シン・ヨンラン
絵/チュ・ソンヒ
解説/キム・ハンソル
訳/小栗章
定価1850円+税
<民画絵本シリーズ>
うさぎの願い 物語を楽しみながら、韓国の民画を鑑賞できるように作られている絵本。
虎に捕まり、食べられそうになったうさぎが虎から「お前の願いは何だ」と聞かれ、知恵を使って危機を乗りこえる。
物語とともに民画をじっくり味わえるのが楽しい。
企画・文/ユン・ヨル
ス、イ・ホベク
発行元/チェミマジュ
定価1836円(税込)
なにに乗ってどこに行きますか 子どもが牛や鶴などに乗って、町や祭りに行く様子が描かれている。
企画・文/ユン・ヨル
ス、イ・ホベク
発行元/チェミマジュ
定価/1944円(税込)
<小説>
土地 完全版 第1巻、第2巻 19世紀末から20世紀半ばまでの韓半島、中国東北部(旧満州)、そして日本を舞台に壮大なスケールで描いた全20巻の大河小説。
さまざまな立場、職業、境遇の愛と恋、悲しみ、喜び、苦難を丹念に描き、生きることの意味を問いかける。韓国でロングセラーとなっている。
著者/朴景利
韓国語版=発行元/マロニエブックス
定価1944円(税込)各巻。
日本語版=発行元/クオン
監修/金正出
訳/吉川凪(第1巻)、清水知佐子(第2巻)
定価/各巻予価2800円+税
<語学・書き写しシリーズ>
お釈迦様の言葉を書き写す 韓国で人気の釈迦の言葉を集めた本。108の釈迦の名言を書き写しながら、自分を見つめ直す機会にもなる。分かち書きの勉強にもなるので、韓国語学習者も活用できる。
著者/BBS仏教放送
発行元/ビダンキル
定価2808円(税込)
李舜臣を読む、書く 『乱中日記』は、李舜臣が豊臣秀吉による壬辰倭乱(文禄・慶長の役)の間に記したもので、戦闘状況に関する記録だけでなく、当時の気候、地形、庶民の暮らしなどについても触れている。同書は、李舜臣の格言の原文と解説を収録。自ら書き写すことで、当時の李舜臣の心情に迫ることができる。
著者/チョン・チュンスン
発行元/ウィズダムハウス
定価2549円(税込)
柳成龍を読む、書く 柳成龍は、朝鮮王朝第14代王・宣祖に仕えた宰相。数多くある著作のなかで、最も有名なのが『懲録』。壬辰倭乱の一部始終を詳細に書き記したもの。
同書は、柳成龍の複雑な心と冷静な評価がよくあらわれている部分を選んで収録した。原文と解説を書き写すことができる。
著者/ソン・ジスク
発行元/ウィズダムハウス
定価2549円(税込)
<健康>
飲食のくにではピビムパプが民主主義だ 韓国料理と詩のコラボレーション本。39品の料理ごとに韓国の詩人が書いた詩、そして在日韓国人の歌人の作品が対訳で紹介されている。
編集/韓国詩人協会、クオン
訳/中村えつこ
料理・レシピ/趙善玉
料理解説/八田靖史
定価1944円(税込)
今回紹介した書籍は、「チェッコリ」ホームページ(http://www.chekccori.tokyo)の書籍注文受付、または東京都千代田区神田神保町1‐7‐3 三光堂ビル3階「チェッコリ」で直接購入できる。営業時間12〜20時。定休日は日曜・月曜。電話(03・5244・5425)。
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チェッコリの古川綾子さんに聞く
まずは絵本で入る韓国語学習…最近「書き写し本」が人気 2016年の韓国は『嫌われる勇気』や『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が年間総合売上ランキングのベスト10に入るなど、相変わらず日本の書籍が人気の1年だったようです。
2015年7月、神保町にオープンした「チェッコリ」は、韓国語の小説や詩、エッセイ、児童書、漫画、料理や旅行関連の実用書など約3000冊に加え、韓国語学習書、日本語の韓国関連本約500冊を取り揃えています。
もちろん、韓国のベストセラーも常時チェックして店に置くようにしていますが、それ以外にも店主の金承福や各店長(曜日ごとに担当が変わります)のお薦め本などを積極的に仕入れてご紹介するようにしています。
チェッコリで接客をしていると「どんな本がいいのか」とアドバイスを求められることがよくあります。ご自身の韓国語学習の一環として本を読んでみたいというお客さまが多いのですが、勉強を始めたばかりだという方には、1ページの分量もそれほど多くなくて、読みやすい絵本をお薦めしています。
その中から今回は韓国語と日本語の両方で読める絵本や児童書を3点、韓国の民画を楽しめる絵本を2点、ご紹介させて頂きました。
中級や上級学習者のお客さまには、少し長めの詩集や短編小説をご紹介することが多いのですが、『飲食のくにではピビムパプが民主主義だ』は、コリアン・フード・コラムニストの八田靖史さんの料理解説や詩にあわせたメニューの簡単なレシピもついていて、詩と韓食を同時に楽しめる1冊となっています。
韓国で最近人気なのが書き写し本。著名人の日記や格言を書き写すことで見えてくるものがあると、ブームを巻き起こしているそうです。
早速チェッコリでも何点か扱ってみたところ、「韓国語の学習にピッタリ」という意外な視点からの感想を多く頂きました。実際に使ってみたところ、格言に触れるきっかけとなるだけでなく、韓国語の分かち書きの勉強にも役立つことがわかりました。新たな韓国語学習本として、今後もお薦めしていきたいと思っています。
そして待望の小説『土地』(朴景利)の日本語訳完全版、第1巻と2巻がチェッコリを運営する出版社クオンから発行されました。全20巻を年に数巻ずつ出版していく予定とのこと、こちらも楽しみです。
(2017.1.1 民団新聞)