掲載日 : [2017-01-01] 照会数 : 8877
<丁酉年>夜明けを告げる 鶏のように
[ 夜明けを告げる 鶏のように ]
池官
子孫繁栄の象徴
悪神から家を守り
枕に刺繍親鶏と雛
〞꼬끼오〟
〞や、朝だよ〟
今年は酉歳。夜明けを告げる鶏の鳴き声。新年が明けた。
太陽を呼んでいる鳴き声だ。
韓国では新郎と新婦は、一つの長い枕を一緒に使う。その枕の両横には雄鶏と雌鶏の刺繍が施され、雌雄の間には黄色い雛が数羽歩いている。
今は婚家で暮らすけど、昨年、新婦の実家で行われた彼らの結婚式の台の上にも、生きた雄鶏と雌鶏が礼物と共に置いてあった。二人は結婚の意味をよく理解しているのだろう。雛のように数多い子どもを産むことは、家系を絶えさせないことを意味する。鶏は子孫繁栄の象徴なのだ。
「雌鶏は毎日一個の卵を産んでね、雛を増やそうとする母、それは雌鶏の母性愛…」
新郎は枕の飾りを見ながら笑う。親戚たちは、二人の部屋に鶏の飾りのついた枕をそっと置きながら喜んだ。奥の部屋に住む新郎の両親も雛の刺繍に多くの期待を込める。
チェサにも大活躍
「새해 안녕하십니까」(新年おめでとうございます)と嫁ぎ先で嫁が挨拶すると両親は嬉しそうに答える。
「今年は雛のようなかわいい子どもを産んでほしいね。酉歳はいい干支だからな」
舅は酉歳が好きだ。昨年の元旦には虎の絵を貼って家庭の不幸を防いだが、今年は家の大門に鶏の絵を貼った。魔除けの絵だ。
尖ったくちばし、悪神が怖がる強力な赤い鶏冠、いつも四方を監視する目は、家庭を悪神から守る力があるからだ。
舅は朝鮮朝時代(19世紀)の画家、張承業の鶏の絵が好きで今も自分部屋の奥壁に掛けている。もちろん原画ではない。嫁はその原画を町の博物館で見た記憶がある。
「お前たちは知っているかな。天界には金鶏という鶏がいて金鶏星に住んだ。金鶏が暁に鳴き、これに応じて地上の鶏たちが一斉に鳴くと太陽が昇って夜の鬼神たちが逃げていく。その神秘的な金鶏は天上の天門を出て地上を往来するんだ」
舅は、息子夫婦に金鶏星に住むという鶏の話を熱心に説明する。そして二人は初めて聞くかのように舅の話にうなずく。
先祖の霊を祭るチェサ(祭祀)の時にも鶏は活躍する。
チェサは命日前日の夜暗くなってから始まる。魚、肉、チヂミ、栗、韓菓、果物などの美味しそうなお供え物が膳に用意されている。子どもや孫たちはお供え膳の前に正座して、じっとしていなければならない。
チェサの儀式は男性だけで執り行う。父や伯父たちが箸と匙を整えながら「ご先祖さま、たくさん召し上がってください」と言っている。子どもや孫たちは唾を呑み込みながら、しびれた足を我慢している時、「 」と夜明けを告げる鶏の鳴き声。
子どもたちはウアッと立ち上がり膳を囲む。今までお供え料理を食べていた先祖の霊たちは、鶏の鳴き声と共に先山の墓に急いで帰ってしまった。父や伯父たちも、東の空が明るくなったのを確認してうなずく。腹ぺこの子どもたちを助けたのは鶏の鳴き声だ。
諺や物語主人公に
「霧が濃く覆っている夜の森。木の下で白い鶏が鳴いていた。鶏の頭の上から伸びた木の枝に金の箱がぶら下がっている。それを村に持っていくと箱から勇気ある子どもが現れた。その少年がスクスク成長して部族の王になり…」
この話は韓国では有名な新羅王族金氏の伝説だが、その前から韓半島では鶏を聖なる鳥として崇拝しており、他の氏族の始祖も鶏の卵から産まれたと伝わっている。つまり卵生説話である。 6世紀頃の新羅では、多くの僧侶たちは仏教を習うため天竺に行ったが、当時のインドの寺では新羅の僧侶を〞矩矩咤(구구닥)お坊さん〟と呼んだ。新羅または東邦を意味するこの言葉は多分、鶏が鳴く擬声語ではないか、と学者たちは言う。
それにちなんだ習慣なのか。農村では犬、牛、馬、ヤギ、鴨の家畜の中でも鶏は特に大事に扱った。鶏を主人公にした物語や諺も多い。
닭 쫓던 개 지붕 쳐다보기(鶏を追いかける犬、屋根を見上げるようだ)は、鶏を追いかけた犬が屋根ばかり見上げる。どうすることもできない意味。
닭 소 보듯、소 닭 보듯(鶏が牛を見るように、牛が鶏を見るように)は、関心がない者同士がお互いを見るという表現だ。
촌 닭 관청에 간 것 같다(山村の鶏が官庁に行ったようだ)は、賑やかな場所だったり、初めてのことに戸惑う様子を比喩して言う時に用いる。
薬や食べ物歌にもなって
このように諺まで生んだ鶏だが、他の面でも貢献している。韓方薬では丹雄鶏や白雄鶏、烏雄鶏、烏骨鶏の種類に分けて使われる。特に赤い鶏冠は赤ちゃんのためにお母さんの母乳を出やすくしてくれると言う。
また参鶏湯、鶏百熟、鶏足などの美味しい鶏料理も多い。近年はフライドチキンも人気で、スーパーマーケットでは無受精卵も安く売られる。
しかし今も韓国の田舎(宜寧・金海地方)の祭りに行ってみると、村民たちはチャンゴを叩きながら「鶏の歌」や「鶏打令」などの民謡を歌っている。幼稚園児も「雛の歌」を歌う。
나리나리 개나리 입에 따다 물고요 병아리때종종 봄나들이 갑니다
(連翹、連翹、黄色い連翹、口に摘んでくわえて雛の群れがスタスタ春のお出かけをします)。
春の雛は大抵2月頃雌鶏が卵を抱いて温め、3月頃にふ化したものだ。母親の雌鶏の後にぴたっとついて、庭の垣根の下をぴょこぴょこ歩く彼らの姿は本当にかわいい。
湿気を含んだ春の土を鶏足で掘って餌を見つけた後、「クククー」と子どもを呼んでいる母性愛には感動する。
(2017.1.1 民団新聞)