民団韓食ネット協議会会長 崔千浩さん
協同組合浅草商店連合会理事長 丸山眞司さん 江戸の風情ただよう浅草。江戸時代、朝鮮通信使の宿所となって、韓国との縁は深い。そのゆかりの地で昨年11月、民団韓食ネット主催の下、「日韓グルメフェア2016」が開催され食を通じた韓日市民の交流が行われた。浅草のメーンストリートでもある六区ブロードウエイは3日間、数万人の人出でにぎわった。一大イベント成功の裏には地元商店会の後押しがあった。民団韓食ネット協議会の崔千浩会長と協同組合浅草商店連合会の丸山眞司理事長に、市民レベルにおける韓日交流のあり方について語ってもらった。
連日数万人が楽しく往来
グルメフェア大成功 ◆浅草での開催は2015年に続いて2度目となりますが。
崔 それ以前は韓流の街といわれる、新大久保コリアンタウンで同様のイベントを3回開催しました。それはそれで大きな反響を呼びましたが、コリアンタウンを訪れる人たちの多くは韓流ファンの人たちで、リピーターも目立っていました。大久保だけの「井の中の蛙」から脱皮し、もっと幅広い人たちに韓国への理解を広げようと考えたのです。
新大久保のイベント以来協力を頂いた東京日韓親善協会連合会の保坂三蔵会長に相談したところ、浅草開催を勧められました。
そんな縁で、今、最も観光客が集まり江戸の風情漂う街、浅草開催に挑戦してみました。そのためには、地元の方たちの応援と協力が不可欠でした。そして地元商店会の丸山理事長を紹介して頂きました。
丸山 江戸時代、朝鮮通信使の宿館として浅草の本山東本願寺(別名浅草本願寺)が使われていました。行列を組んで江戸市内を巡り、江戸城と浅草本願寺を往復したこの行列は、江戸庶民にとって、異文化に触れることのできる数少ない機会だったはずです。
また、戦後、在日の方が多く住み着いた街でもあり、「焼肉通り」と「ホッピー通り」があって、ひとつのコリアンタウンのようになっています。
実際、小・中学校の同級生には在日の人たちも多かった。ここで商店や飲食店を営む在日の人たちも、浅草を故郷のように思ってくれているはず。だからこそ私としても大切にしたいと思っている。
保坂会長も同じ台東区という地元であり、そんな趣旨から勧めたのでしょうね。
黙れ、とにかく協力だ
ヘイトデモ危惧する店主に ◆地元商店会の理解と実現までのエピソードなどは。
崔 まず丸山会長と会い、開催の趣旨を伝えました。丸山会長は珈琲が大好きで、初めて会ったのは喫茶店でした。偶然にも、私と同い年ということで、お互い親しみを感じ、すぐに意気投合しました。
1回目の時は、試行錯誤もあり、なかなか、うまくいきませんでしたが、2回目はそのへんを反省しながら準備を進めたことで大盛況の結果を残せました。
ストリートには30のブースが出店しましたが、合計で800万円近くの売り上げになりました。周辺が軒並み飲食店の場所ですから大善戦と言えます。最終日は午前中に売り切れというブースも続出しましたからね。
丸山 正直、最初はヘイトスピーチデモが来るのではとか、反対の声もありました。それには一言、「いいから黙れ!」。自分たちの街で日本と韓国が仲良くしようと開催するのだから、とにかく成功させるためにも、地元が協力するのが筋だ。そう伝えながら、商店会のメンバーの同意を得ました。
◆浅草開催で街がどう変わりましたか。また、地元の人たちはどうとらえてくれましたか。
丸山 浅草は5月の「三社祭」や夏の「サンバカーニバル」など、日本だけでなく世界からも多くの旅行客が訪れる観光の街。2回目のメーンストリートとなった六区ブロードウエイで、3日間にわたってあのような韓国イベントを開催したのは初めてです。まして、メーンステージから韓国語のあいさつや歌が響き渡ったのも初めて。そんな意味では、歴史的な3日間となりました。
崔 キムチグランプリではわずか1時間で544票と多くの観光客が試食審査に参加してくれて、驚きました。海外からの観光客も多かったのですが、まさか浅草に観光に来てキムチを食べるとは思っていなかったんじゃないですかね。
丸山 道の真ん中に豪快にキムチが並べられ、みんながおいしそうに食べている姿を見て、開催して良かったなとほっとしました。
韓国料理だけでなく、日本全国のブランド豚を使った料理が加わったことも良い企画だったと思います。そのように色々取り入れていくことが大切ですよ。
正直、政治ではぎくしゃくしても民間同士はこんなに仲良くできるんですよね。
◆開催するにあたって苦労した点は。また、今後に向けた課題などは。
丸山 これから課題が出てくると思います。飲食店をはじめ色々な業種の組合があるだけに実際、「うちらの商店のイベントを優先してやるべきでは」とか「主催側から挨拶にもこなかった」とかの意見も出ていますから。
崔 確かに浅草は色々な業種毎に組合が細分化されていて、把握できなかった部分もありました。そういった意味で、継続していくためには、しっかりした根回しが必要ですね。 Protentus.lt - Prekybiniai stalai ir
palapinės lauko prekybai 一方通行の伝達に終わらせず、深く細かく理解してもらうために説明をしていき、双方向の関係づくりを図るべきですね。
丸山 日韓両国の民間団体が昨年、朝鮮通信使の世界記憶遺産登録を申請しています。実は私もそれに関わることになったんです。ですからそういう歴史も含めて両国の友好を深める行事を見習っていくべきですよ。
そのような趣旨を伝えながら続けていけば、もっともっと多くの人たちが納得して、素晴らしいイベントに育っていくと思いますよ。
崔 とにかく六区ブロードウエイで開催できたのは、丸山理事長の粘り強く力強い説得力があったからこそです。
丸山 いやいや、崔会長の人柄が成功させたんですよ。3日間、好天に恵まれたのも崔会長の運の強さじゃないですかね。崔会長はきっと根っからの「晴れ男」なんですよ。
◆韓国に行ったとき、または日本に来たとき、お勧めしたい料理は。
崔 第一はスープでしょう。韓国の食卓にスープは欠かせませんからね。種類も豊富で、地方ごとに特産物を具材に使ったものがあり、それぞれに味わいがあります。その中でもお勧めは「ソンジ・ヘジャン(解腸)クッ」。韓国はよく酒を飲みますから、二日酔い解消のスープも発達しているんですよね。
とりわけ、ソンジという牛の血の煮こごりを加えたスープは、味も抜群で二日酔いも吹っ飛ぶ気分になりますよ。ただ、私は余りお酒は飲みませんけど。
丸山 へえー。一度味わってみたいねそのスープ。今度挑戦してみよう。でもね、私だったらピビンパがいいね。野菜が豊富で健康的だし大好きですねえ。
崔 それから、オリ(合鴨)料理も美味しいですよ。気を補う作用、血を補う作用、水毒を改善する作用があると言われ、今韓国では大人気です。
丸山 和食といえば寿司、鰻、天ぷら。この代表的な3品を勧めたいね。実際、海外からの観光客も好んでます。浅草にはほかにも美味いものがたくさんありますよ。
2013年に韓国のキムジャンと和食が同時にユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。
今年、朝鮮通信使が世界記憶遺産に登録されたら、それを記念したイベントもぜひやるべきですね。もちろん、「晴れ男」の崔会長を先頭に立てて。
崔 それはいい考えですね。もちろん私がしっかり好天に貢献しますよ。
(2017.1.1 民団新聞)