掲載日 : [2020-07-29] 照会数 : 6965
外国籍者の地方公務員採用、一般職の開放進まず…民団人権擁護委が全国調査
[ 調査報告書の内容ページ(下)と表紙(上) ]09-17-16.jpg)
外国籍者の地方公務員採用…一般職の開放進まず
民団人権擁護委が全国調査
外国籍者が地方公務員、教育公務員になれるのか。民団中央本部・人権擁護委員会(李根茁委員長=民団中央本部副団長)は2019年4月1日現在で全国の地方自治体を対象とした実態調査の結果をまとめ、報告書として公表した。対象は地方公務員が都道府県、政令指定市、一般市、特別区の計862カ所、教育公務員は都道府県教育委員会と政令指定市教育委員会の計67カ所。
報告書によれば、地方公務員では1府10県とすべての政令指定市がほとんどの職種を開放していた。東京都と23区のような部分的な開放は全都道府県や中核市の大半に及んでいる。
政令指定市・中核市・東京23区には外国籍住民の52%(うち、韓国・朝鮮人は65%)が居住していることから「この状況は大きい」と強調している。これら大都市を中心に700人以上の外国籍職員が在住していることも明らかになった。
ただし、「公権力の行使」や「公の意思形成」とは無縁の現業職、自治省(現・総務省)が86年に公権力行使の「職位につく蓋然性は低い」と開放にお墨付きを与えた看護三職(保健師・助産婦・看護師)ですら外国籍住民を排除する「桁落ち自治体」がいまだに存在していた。
調査からは「どのようにその判断を正当化しているかは不明」と指摘。地方公務員法などには外国籍者の採用を禁じた明文規定はない。根拠不明であいまいな1953年の内閣法制局見解が自治体の消極性につながり、事実上、外国籍者を締め出す根拠となってきたのだろう。同報告書は「受験資格の問題というより自治体の品格であろう」と批判している。
◆常勤講師が教員の大半
教員については「韓日法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書」(91年1月)により、教員採用試験から国籍条項が撤廃された。採用不可とする教育委員会は皆無となったが、昇格のない常勤講師として採用される外国籍教員が大半。「覚書」以前から教諭として採用された外国籍教員たちからは「格下げ」と不満の声が聞こえる。
調査結果を概観した人権擁護委員会の薛幸夫副委員長は地方公務員一般職の開放が進んでいない現状を指摘し、「慄然」「唖然」という表現で慨嘆していた。
調査にあたっては『外国人が公務員になる本』(98年、ポット出版)を編纂した岡義昭さんと水野精之さんから全面的な協力をあおいだ。巻末には島根大学の岡崎勝彦名誉教授がまとめた分析結果を収録した。
(2020.07.29 民団新聞)