掲載日 : [2020-09-16] 照会数 : 4881
【新刊紹介】幻の『関東大震災』復刻
97年に絶版となった幻の名著、『関東大震災』(姜徳相著、中公新書)を新幹社(高二三社長、東京・千代田区)が同社の選書⑦として復刻した。本書は関東大震災のもとで引き起こされた朝鮮人虐殺の本質に迫った「最も基本となる研究書」とされている。
戒厳令下、最大の権力を集中しながら虐殺事件の防止も鎮圧もできなかったのはなぜか。姜さんは朝鮮人の内乱を恐れた軍隊が戒厳令をしき、その戒厳令のもと「どこからともない流言」にのせられた官憲が虐殺を主導し、教化された差別観を持つ民衆が実際の行為に加担していった構図を克明に暴いていく。
著作からはひとかけらの予断も偏見も感じとれない。一次資料を読み解き、「官憲が主導的役割を果たした権力犯罪だった」ことを淡々と、そして鋭く暴いていく。通奏低音となって聞こえてくるのは「不逞鮮人とされ、異境にさすらう亡国の民の痛ましき人権」への嘆きだ。「まえがき」には「加害者は二度とくりかえしてはならない。被害者は二度とくりかえされてはいけない決意と反省への保証となるべきもの」と執筆に至った動機を記している。
学生時代にこの本と出会ったという高さんは、「この厚さで問題の本質を分かりやすく、総合的にとらえている。デマゴギーが警察や軍隊によってつくられ、流されていった経緯は済州島四・三事件ともあい通じるものがある」と話している。
税別1500円。新幹社(03・6256・9255)。
(2020.09.16 民団新聞)