掲載日 : [2022-09-29] 照会数 : 1962
韓国絵本の全貌に迫る 200冊以上そろえて展示 ‐高麗博物館‐
[ 企画展会場で語る加賀谷浩子さん ]
日本人愛好家グループが企画
日本でも人気の韓国絵本の全貌に迫る企画展が東京・新宿の高麗博物館で開催されている。韓国の絵本が大好きという日本人有志でつくる「絵本でコリアを知る会」による人気シリーズ企画「絵本で知ろう!おとなりの国」の第3弾。過去2回を上回る200冊以上をとりそろえ、韓日両国の相互理解を目指す。
内訳は日本語訳150冊、日本語では翻訳されていない原書も50冊以上。ただ可愛いだけにとどまらない伝統を意識した絵本づくりや社会的なメッセージ性に着目して「文化と伝統」「平和」「人権」「環境」などに区分・整理した。さらに、体系的に理解を深められるようにと1988年から18年まで30年間にわたる「韓国の創作絵本年表」も制作し、パネルで展示した。
『山になった巨人‐白頭山ものがたり』(福音館書店、90年)は韓国創作絵本の先駆者といわれる柳在守さんの作品。韓民族誕生の物語を壮大なスケールで描き、『シンデレラ』のようなかわいい絵本世界に一石を投じた。
絵本『こいぬのうんち』(平凡社、00年)は「自分は何の役にも立たない」と思い込んでいるうんちが何かのために頑張り、輝やこうと奮闘する物語。自分の存在価値に気づくことで自分に自信を持てることを教えてくれる。貧しく力のない人たちの真実な生き方と心の美しさを描いてきた童話作家、権正生さんの作品だ。
『天女銭湯』(ブロンズ新社、16年)は、白希那さんが手づくり人形とアニメーションの技法を用いて創作した新しい絵本の形だ。
同展を企画した加賀谷浩子さんは元中学校の社会科教師。日本にはない韓国絵本の魅力にはまり、原書で読んでみたいと退職前から韓国語を独学した。それだけに一部の翻訳作品については原書の魅力を伝えきれていないと苦言を呈した。
好きな作家は権正生さん。その清貧な生きざまにあこがれ、高麗博物館でのボランティアを志すことになった。特にお勧めは『こいぬのうんち』と『金剛山のトラ』だ。
23年1月29日まで。10月15日には14時から大竹聖美さん(東京純心大学教授、韓国絵本翻訳家)が「韓国の絵本の30年」と題して講演する。要予約。問い合わせは高麗博物館(03・5272・3510)。