掲載日 : [2022-10-27] 照会数 : 12187
日韓文化交流基金 鹿取新理事長「関心持ち続ける枠組みを大切に」
[ 鹿取克章日韓文化交流基金理事長 ] [ 訪日青年は江戸東京たてもの園を視察 ] [ 訪韓学生は韓国の学生と交流 ]
両国の青少年交流事業…3年ぶりに再開
日韓文化交流基金 鹿取新理事長インタビュー
韓日両国民の相互理解と信頼関係を深めるため、1983年12月に設立された日韓文化交流基金の新理事長として鹿取克章氏(元駐インドネシア大使)が先月1日付で就任した。今年9月、長引くコロナ禍で中断していた往来をともなう日韓の大学生らが参加する青少年交流事業(訪日事業・訪韓事業)が3年ぶりに再開された。「人と人が直接、触れ合うことによって得られることは多い」。鹿取理事長はそう話す。
同基金は、「青少年交流」「助成(交流支援)」「フェローシップ」「会議事業」の4分野を柱に日韓の人的・文化的交流を実施してきた。
今年9月に再開された青少年交流事業は、23日から29日まで実施。日本側は23人、韓国側は17人が参加し、相手国の各種施設、大学訪問などを通じて相互理解と信頼関係を深めた。
同基金は、各種の青少年交流事業を活発に始めてからこれまでに、両国の参加者が4万人を超えた。
鹿取理事長は、1963年にフランスとドイツの間で締結されたエリゼ条約(仏独協力条約)に言及。同条約は、第2次大戦後の両国の協力、和解と理解を目指す内容になっている。
「この条約に盛り込まれた大きな柱の一つが青少年交流だった。63年に条約ができてから今日まで、約950万人が交流した」と、きめ細やかな取り組みについて説明した。
一方、韓日間の現状については、「現在も学校同士とか自治体同士など、いろいろな枠組みで交流も進んでいるが、お互いにもっと交流がしたいという雰囲気が盛り上がることが重要だと思う」。
「同時に、可能な範囲で姉妹都市交流を行っている自治体の方々とか大学や小学校、あるいは文化人など、いろいろな方々と我々ももっと交流を深めて、お互いに意見交換や交流を通じて日韓交流をさらに発展させることができる何かを見つけていきたい」と意欲を見せる。
鹿取理事長は大学卒業後、外務省に入省。ヨーロッパ、アジアなどの大使館勤務、公使などを歴任した。2000年には公使として韓国に赴任している。
東京・新宿のJR新大久保駅ホームから転落した男性を助けようとして電車にはねられ、死亡した韓国人留学生、故李秀賢さんを顕彰するために設けられた「エルエスエイチアジア奨学会」の会長に2016年就任、現在に至る。
韓国と日本は、1998年に当時の金大中大統領と小渕恵三首相の両首脳による、21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップを構築する宣言をした後、金大中大統領は日本の大衆文化を段階的に解放、そして02年の韓日共催ワールドカップサッカーによって、韓日交流の大きな流れが出てきた。
その流れの中で紆余曲折はあったが、2018年には両国を往来した人が初めて1000万人を超えた。だがそれ以降、状況が厳しくなり、特に2019年7月には日本から韓国への輸出規制が強化されたのをはじめ、新型コロナウイルス感染拡大によって「せっかく1000万人まで増えた交流が、ここまで少なくなってしまった」。
「韓国はこんなに近い国で、いろいろな問題を共有している。また過去の歴史においてもいろいろな交流があった間柄です。やはり若いうちから交流をして、できるだけ早い段階からお互いのことに関心を持って、お互いのことを知り合うというのは特に日本と韓国との間では重要だと思う」
2019年1月に結成された「日韓アルムナイの会」(JKAF)は、同基金が主催する大学生訪韓団参加者を対象とした訪韓団OBOG組織だ。
訪韓団の経験を社会に還元することを目的に、ネットワーク作りの場を提供するほか、同基金の事業をサポートする。同年、韓国の大学生グループが「韓日アルムナイの会」を発足させた。
「1回行事に参加して終わりということではなくて、どういう形であれ、韓国に対する関心を持ち続け、韓国の方においては日本に対する関心を持ち続けるような枠組みがあったらいいなという意味で、このアルムナイはとてもいい方法だと思う」
今後の同基金の活動について、「我々は今まで着々と地道にやってきたと思う。この地道な活動を野心的にならず、市民レベルの活動をサポートしていくことが重要だ」。まずはオンラインではない本当の交流を進めていきたいと鹿取理事長は強調した。
訪問先で様々な行事に参加
今年9月、3年ぶりに再開された青少年交流事業は、日本側の「大学生訪韓団」と韓国側「韓国青年訪日第1団」が、双方の国を訪れた。
「大学生訪韓団」は、大学訪問などを通じた同世代との交流、「日韓交流おまつり2022 in Seoul」への参加などを通じて韓国の社会や文化に対する理解を深め、日本の魅力を積極的に発信。また忠清南道扶余では宮南池、百済文化団地、ソウルでロッテワールドタワー・ソウルスカイなどを視察した。
「韓国青年訪日第1団」は、テーマに沿った講義聴講、学校訪問、同世代交流などのほか、東京オリンピック・パラリンピック関連施設(国立競技場、日本オリンピックミュージアム)、外務省、京丹後市では久美浜椀カヌーセンターなどを視察した。