掲載日 : [2022-12-07] 照会数 : 2155
「韓国のタルチュム」 ユネスコ文化遺産に
[ 鳳山タルチュム(重要無形文化財第17号、写真提供文化庁) ] [ 統営五広大 ] [ 固城五広大 ] [ 駕山五広大 ]
風刺とユーモア 大衆が支持
一時は壊滅状態 解放後に再生
先月30日(現地時間)、モロッコのラバトで開催された第17回ユネスコ無形遺産保護条約政府間委員会(11月28日~12月3日)は、「韓国のタルチュム」をユネスコ人類無形文化遺産代表リストに登録することを最終決定した。
ユネスコ政府間委員会では韓国のタルチュムについて、「平等という普遍的な価値を認め、社会的な身分制度に対する批判を交えていて現代でも通じるなものがある。各地域の文化のアイデンティティーという側面でも象徴的な要素として位置づけられている」と高く評価した。
韓国の伝統仮面劇「タルチュム」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まった。
登録された「韓国のタルチュム」は合わせて18種目。楊州別山台ノリ、統営五広大、固城五広大、江陵端午祭中の「官奴仮面劇」、北青獅子ノルム、鳳山タルチュム、東莱野遊、康翎タルチュム、水営野遊、松坡山台ノリ、殷栗タルチュム、河回別神クッタルノリ、駕山五広大の国家無形文化財13種目と、退渓院山台ノリ、醴泉青丹ノルム、晋州五広大、金海五広大、束草獅子ノリの市・道指定文化財5種目。
韓国のユネスコ無形文化遺産登録は2001年に初めて登録された「宗廟祭礼と宗廟祭礼楽」をはじめ、パンソリ、江陵端午祭などがあり、2020年に釈迦の生誕を祝う仏教行事「燃燈会」が登録されて以来、「タルチュム」で22件になった。
タルチュムとは一人もしくは多くの人が仮面で顔や頭全体を覆い、他の人物や動物、または神などの超自然的な存在に扮装し、音楽に合わせて踊りながら台詞を語る演劇のことである。
17世紀中頃になると宮中の管掌のもと、「山台」と呼ばれる舞台で披露された「山台都監劇」の一種として扱われた。仁祖12年(1634)に、宮中での上演が廃止されたため、それが民衆に流れて全国に伝えられるようになった。
大衆娯楽として庶民から絶大な支持を受け発展してきたが、日帝時代にその殆どが壊滅状態にまで陥った。
しかし解放(1945年)後、次々と再生され、1970年代から80年代に大きなブームを巻き起こした。
韓国を代表する伝統大衆芸能として様々なイベントで演じられているタルチュムは、不条理な社会問題や道徳的矛盾などの難しいテーマをユーモアと風刺で表現した点が特徴。観客の反応も劇中の要素として活用され、今や現代芸術にも大きな影響力を発揮している。
市場で生まれた五広大
かつては旧正月に
五広大は南部地域(洛東江西側地域)のタルチュムのことで、草渓バンマリ村の市場でグァンデペ(芸人たち)が披露したことから始まったと言われている。
洛東江を中心に釜山の東莱・水営地域ではドルノルムと呼ばれ、統営・固城・駕山地域では五広大と呼ばれている。
「五広大」とは、5人のグァンデ(広大=芸人のこと)、もしくは5幕から構成されたノリという意味から付けられた名前であるとも言われ、陰陽五行説の「五」から由来したものとも言われているが、陰陽五行説が有力である。
かつては旧正月15日を中心に行われたが、現在は春と秋に娯楽的なノリとして公演が行われている。今は、五広大の中で獅子舞があるのは統営五広大だけであり、庶民生活の哀歓を込めている伝統的ノリとして重要無形文化財に指定されている。
(2022.12.07民団新聞)