掲載日 : [2017-01-18] 照会数 : 6067
<横浜市教委>新副読本「朝鮮人殺害」は残す…関東大震災記述
[ 経過を報告する「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」の後藤周さん ]
【神奈川】横浜市教育委員会が新副読本『Yokohama Express』から削除を検討していた関東大震災直後の朝鮮人殺害の記述は残すことになった。市民団体「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」(北宏一郎代表)による情報開示請求で明らかになった。同会は14日、横浜市内で開いた緊急集会で「最悪の事態は押しとどめることができた」と報告した。
「虐殺からは後退」市民団体が抗議集会
市民団体が開示請求して2016年6月に入手した最初の原稿では「大地震で横浜の市街地が一瞬にして灰となった」との記述があるのみ。関東大震災の虐殺事件の記述は一切見られなかった。
同じく12月19日に入手した原稿では「この混乱の中で、根拠のないうわさが流れ、朝鮮人や中国人が殺害される、いたましいできごとも起こりました。どうしてこのようなことが起きたのでしょうか」に書き換えられた。朝鮮人、中国人が殺害された事実が記述され、「なぜ起きたのか」学ぶことを重視していることがうかがえる記述となった。
これは研究者と市民団体が9月にそれぞれ、関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺の事実およびその背景を記載するよう求めたことが報道されたため。事実を知った市民の抗議、意見のメール、電話などが市教委に殺到したからだ。
集会で報経過告に立った元中学校社会科教員の後藤周さんは、「多くの市民の反対の声によって、歴史のいんぺいを図ろうとした最悪の事態は押しとどめることができた」とほっとした表情。
副読本は市立中学生1年生向け。これまで『わかるヨコハマ』の名称で発行してきた。「虐殺」の記述は90年度版から登場した。ここには横浜における民族差別の存在を認めた当時の市教委の自らの反省と人権教育推進の決意が込められていた。内容を見ると1,横浜が虐殺の地であったこと2,自警団だけでなく警察、軍隊も関与した3,背景に植民地支配と差別意識があった4,歴史の反省を示す「殉難朝鮮人慰霊之碑」の写真と説明の4点に沿って記述されていた。
同様の記述は20年間続いた。09年度版で「軍隊、警察の関与、朝鮮人慰霊之碑」が削除されたが、12年度版で復活。これに一部の市議が反発。市教委は「誤解を招く部分があった」として副読本を回収し、13年度版からは「虐殺」を「殺害」に変更し、軍隊や警察の関与の記述も削除された。
集会で市民団体は「副読本問題は何も解決していない」として、一部政治勢力の意向のままに削り取られた「軍隊、警察の関与」「虐殺の語句」の記述復活、および「殉難朝鮮人慰霊之碑の写真」の再掲載を求めている。
(2017.1.18 民団新聞)