掲載日 : [2017-01-18] 照会数 : 6277
<識者コメント>ヘイト該当は明白・放置は「法」に逆行…在特会前会長の民団前演説
東京法務局「侵犯不明確」決定
昨年9月21日、呉公太中央団長名義で「人権救済申立て」を行った件について、東京法務局は同年12月27日付で「人権侵犯の事実があったとまでは判断することができなかった。侵犯事実不明確の決定をした」と通知してきた。
「人権救済申立て」は昨年7月15日、在特会の桜井誠前会長が、東京都知事選挙活動中、民団中央会館前で「日本からさっさと出て行け」などと差別発言したことを、民団職員に対するヘイトスピーチだと問題視したもの。今回の決定に当事者や有識者らがコメントを寄せた。
人権擁護委員会・李根委員長=人権問題に中立はないとの基本姿勢で判断してほしかった。しかし、法務省の取り組みは2014年9月以降劇的にかわり、ヘイトスピーチに関する実態調査を行い人権啓発に力を入れている。ガイドラインを示したのも評価できる。委員会は不備のあるヘイト対策法をより強固な法律へと変える活動の重要性を再認識した。
有田芳生・民進党参議院議員=職業的な差別主義者である桜井誠前会長が、都知事選挙時に意図して民団本部前で行った演説は、典型的なヘイトスピーチをふくむものだ。これは京都朝鮮初級学校襲撃事件で「日本から叩き出せ」などと叫んだことが「憲法13条にいう『公共の福祉』に反しており、表現の自由の濫用であって、法的保護に値しない」とした最高裁判決と同様の発言だ。東京法務局が「侵犯事実不明確」としたことは、ここ数年間にわたり法務省人権擁護局が積極的に取り組んできた水準からの明らかな後退だ。
法曹フォーラム・張界満弁護士=法務省のヘイトスピーチに関するガイドラインに照らしても、桜井前会長の街宣がヘイトスピーチに該当する事は明白だ。にもかかわらず、決定は「不明確」であった。選挙活動を利用したヘイトに対しては、対策法はもちろん公選法の改正までも模索すべきだ。良心的日本社会と団結し、ヘイト根絶に向けて不断の努力が必要だ。
師岡康子弁護士=選挙活動中は「無敵」とし、選挙活動を名目にして「快感」と締めくくった文脈を総合的に判断すれば、ヘイトスピーチ解消法2条の定義する「社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」に該当する人権侵害行為となるはずで、不可解な決定だ。放置することはヘイトスピーチ解消法の責務に逆行する。法務局は解消法7条の啓発活動の一環として選挙活動のヘイトスピーチについて見解を出し歯止めをかけるべきだ。
(2017.1.18 民団新聞)