掲載日 : [2016-03-09] 照会数 : 5999
<国際社会>対北制裁へ本腰…安保理決議受け
[ 北韓制裁決議案を全会一致で採択した国連安全保障理事会 ]
事実上の陸・海・空封鎖
金正恩政権の急所突く…中ロ同調
4回目の核実験(1月6日)や長距離弾道ミサイルの発射(2月7日)を強行した北韓に対する国際社会の制裁・圧力は、格段に広範囲かつ緻密なものとなった。
国連安全保障理事会が3日(日本時間)、「70年の国連史上、非軍事的な措置ではもっとも強力で実効性のある制裁決議」(韓国政府)を採択。これを受け、米国や北韓と国交のある7カ国が加盟するEU(欧州連合)も、北韓の権力中枢に照準を合わせた独自の追加制裁措置を発表し、すでに厳しい独自制裁を発動している韓日両国を後押しした。
一方で、対北韓政策が国を揺るがす激しい理念葛藤の対象となってきた韓国は2日、10年以上もたなざらし状態にあったテロ防止法と北韓人権法を成立させるとともに独自制裁をさらに拡充する方針を表明、より毅然と北韓に対処する体制を整えつつある。
また、韓米両軍は7日、韓国各地で史上最大規模の兵力と史上最新鋭の兵器を動員し、前例のない実戦的な合同軍事演習に入った。4月いっぱいまで継続し、5月初に約36年ぶりの党大会を開催する予定の北韓にかつてない圧力をかける。
安保理は今回の制裁決議に2カ月近い時間を要した。1回目の核実験(06年)が5日後、2回目(09年)が18日後、3回目(13年)が23日後だったことからすれば異例だ。
しかし、決議を主導した韓米日3国は、「時間をかけたかいがあった。これまでの決議とは次元が異なる」と高く評価する。異次元の制裁内容であるにもかかわらず、これまでよりはるかに多い50カ国が共同提案し、全会一致の採択となった意味も大きい。
北韓に対するこれまでの制裁は主に、大量破壊兵器(WMD)に関連する事案に絞られていた。今回は小火器を含む武器と関連物資の取引禁止、北韓を出入りするすべての貨物に検査を義務づけた事実上の陸・海・空封鎖、外貨稼ぎの目玉である鉱物資源の禁輸(一部例外条項)のほか、国際金融ネットワークへの接近を遮断する幅広い金融制裁も盛り込んだ。
また、資産凍結や海外渡航禁止の対象に12団体と16個人を追加指定し、これまでの32団体・個人からほぼ倍増させた。主な政府機関や企業とその関係者のほとんどが制裁リストに加えられたという。
今回の決議は多方面から甚大な影響を与えることができ、金正恩政権の急所を突く威力があるとされる。
06年に初めて施行された安保理の北韓に対する制裁決議はこの10年間、まともに機能したとは言えない。中国が設けた抜け道だけでなく、加盟国の意識の低さや能力不測も深刻な問題として指摘されてきた。昨年、制裁措置について自国の取り組みをまともに報告したのは加盟193カ国のうち42カ国のみで、90カ国が06年以降、一度も報告していない。未報告の国には、昨年の安保理非常任理事国が7カ国も含まれていた。
今回の決議はそうした現状にくさびを打ち込んだ。北韓の制裁逃れの手法を見極め、「抵抗勢力」である中ロをも取り込みつつ、それを一つずつ潰していこうとする努力の跡が見てとれる。加盟国の制裁履行状況のチェックも強化された。制裁の効果は発動から90日後、国連の対北韓制裁委員会が評価し、安保理に報告する。
決議案は米国が、北韓住民の生活への影響を理由に慎重姿勢をとる中国との綿密な協議を重ねて起草し、最終局面でロシアと微調整した。その中心を担った米国の国連大使は、「平壌は中国がこのようなアクションを支持したという事実に驚くだろう」と述べ、「ロシアは決議案の核心には触れず、その効力を減少させることもなかった」と明らかにしている。
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北党大会(5月初)へ正念場
警戒要す「在日」への影響
国際社会の制裁履行への本気度はいつになく高い。フィリピン当局は5日、入港した北韓の貨物船を安保理決議に基づいて差し押さえ、乗組員を国外退去処分にした。新決議による制裁が早くも実施されたことになる。
北韓は制裁の着実な拡大と韓米合同軍事演習に反発し、核戦争危機を扇動しつつ軍事挑発を継続する可能性が高い。党大会を「臨戦体制突入」を理由に延期する可能性もある。それを含めてこの2カ月間が最初の正念場となりそうだ。
在日同胞社会もこうした事態と無関係ではない。朝鮮総連と傘下団体および関連企業は、制裁対象に名指しされた北韓の政府・党機関、企業の一部と抜き差しならない関係にあり、事実、多くの違法輸出入事件にかかわってきた。日本当局は独自制裁と安保理決議の履行を担保するためにも、違法輸出入に対する取り締まりをいっそう強化する構えだ。
不正輸出入に関与した総連系活動者の多くが韓国籍であることは知られている。民団や新定住者団体の関係者に食い込み、新たな迂回ルートの開拓に躍起になる可能性も指摘されはじめた。韓日米3国の従北勢力が反韓・反日・反米を掲げて連携し、韓日、韓米の離間をねらう策動も予想され、合わせて警戒を要する。
(2016.3.9 民団新聞)