掲載日 : [2016-10-26] 照会数 : 5756
反ヘイト条例全国へ…自治労がモデル案
人種差別撤廃めざす
全日本自治団体労働組合(自治労、東京都千代田区)は、ヘイトスピーチ(憎悪扇動)を含め、包括的な人種差別撤廃政策に向けてのモデル条例案を公表した。条例案は国会で5月に成立した「ヘイトスピーチ解消法」を根拠法としたが、さらに踏み込んで人種差別にかかることへの禁止事項及び制裁化も明記し、同法をより実効性のあるものにした。各県本部、自治体議員連合、自治研センターなどに呼びかけ、各自治体での施行をめざしていく。
公共施設の利用制限も
正式名称は「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する条例」(人種差別撤廃条例)要綱試案とした。ヘイトスピーチを含むあらゆる差別を「禁止し、終了させる」ことを含めた包括的な法整備は、国だけでなく、地方公共団体も負っているためだ。
自治研作業委員会が研究会で「自治体から発信する人権政策」をテーマに議論を重ね、14、15の両日、仙台市で開催された宮城自治研で中間報告として公表した。
試案は前文と全3章21条で構成。条文を見ると、地方公共団体がまず人種差別撤廃に向けての基本方針を立て、議会および「人種差別撤廃審議会」といった独立の専門機関でチェックを受ける体制を整備することを推奨。そのうえで、公共施設の利用制限をはじめとして差別に加担せず、差別撤廃の担い手となりうる体制の整備と施策を求めている。
具体的には、1,差別を行った当事者に対する氏名の公表など、なんらかの制裁措置2,定期的な差別被害の実態調査3,被害者救済手続きの整備4,インターネット上の差別対策5,マイノリティーの歴史、文化などを含む差別撤廃教育6,多文化交流支援など。
研究会では「公の施設の貸し出しの制限が可能か」で意見が分かれたという。自治労総合政治政策局の座光寺成夫政策局長は「各自治体が条例化するとき、最大の論点になるだろう」と見ている。そのうえで「要綱試案では国のヘイトスピーチ解消法や大阪市の抑止条例で足りないものをすべて盛り込んだ。だが、これが絶対ではない。地方の実情にあわせ、条例化作業をしていくうえでたたき台としてくれれば」と話している。
国のヘイトスピーチ解消法は国ばかりか、4条2項では「当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする」として自治体独自の取り組みを促している。特にヘイトデモ・街宣が行われた地域では、「国とともに、その施策を着実に実施すること」(両院附帯決議第2項)を求めている。
(2016.10.26 民団新聞)