【大阪】大阪府教育委員会は「ヘイトスピーチの問題を考えるために」と題した教職員向け研修用参考資料を3月末日までに作成した。在日韓国人をはじめとする外国籍の児童・生徒への人権侵害を憂慮した民団大阪本部(鄭鉉権団長)が昨年12月、14年度「在日韓国人の民族教育、国際理解教育の推進を求める要望書」に関する交渉のなかで要望していた。
民団大阪の要望受けて
資料はQ&A形式の8㌻建て。ヘイトスピーチが「人権侵害にあたる許されない行為」であることを、さまざまな角度から紹介した。
まず、「ヘイトスピーチとは何か」との問いに「特定の民族や国籍の人を排斥する差別的言動」とした法務省の見解を引用し、近畿弁護士連合会による定義も加えた。
さらに日本も加入・批准している「人種差別撤廃条約」や「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)が、特定の民族や国籍の人に対する差別的言動を禁じていることも強調した。
では、どういうふうにだめなのか。国内では安倍晋三首相と上川陽子法相の国会での答弁を抜粋し、スポーツ界を中心とする海外の事例も加えた。さらに京都朝鮮学校襲撃事件に対する司法判断もコラムで取り上げた。
府教委の担当者は「ヘイトスピーチというと自分ではなんとなく分かっているようでいて、実は正確に理解していないのではないか。もし、先生がそうなら、いざというとき、子どものケアには役立たない」と話している。
資料の最後には「ヘイトスピーチの問題を考える上では、在日韓国・朝鮮人の歴史的背景などを知る必要がある」として、特別永住者制度の歴史的成り立ちを解説し、通称名を使わざるをえない一部同胞の心情に触れた。
民団大阪本部の鄭炳采事務局長は、「府教委として真摯に受け止め、すぐに動いてくれたことに感謝している。せっかく委員会が作ったので、研修資料として最大限に活用してくれることを願う」と話している。
(2015.4.22 民団新聞)