春らしくなってきて、花がたくさん咲きはじめましたね。今回紹介する『あなぐまさんちのはなばたけ』は、今の季節にピッタリ。赤いモンペをはいたアナグマおばさんが、花畑をつくるというお話です。
その前に、少しだけアナグマについてお話ししましょう。日本では別名の「ムジナ」の方がよく知られているのかも知れません。「同じ穴の狢」の、あの「ムジナ」です。ことわざのせいでしょうか、何か悪者のイメージがありますね。
ヨーロッパでは、餌づけされたりペットとしても飼われたりしている、とてもメジャーな動物です。韓国でも、むかしからアナグマの胆のうが薬として使われてきたこともあり、結構、知られています。どちらかというと、明るいイメージのある生きものですよ。
アナグマは名前にもあるように穴を掘って暮らしていて、危険がせまると死んだフリもします。彼らの習性はとてもユニークで、物語の主人公にはうってつけです。なので、ヨーロッパではアナグマが主人公の絵本がたくさんあります。
さて、今回の内容です。 ある日、山の峠の陽だまりでいねむりをしていたアナグマおばさんは、つむじ風によって街まで吹き飛ばされてしまいます。人に見つからないよう急いで帰る途中、ふとのぞいた学校に花畑がありました。アナグマおばさんは、名前も知らないきれいな花にうっとりしてしまいます。
「わたしも家に、きれいな花を咲かせよーっと!」 山の家に帰ったおばさんは、アナグマおじさんと一緒に花畑をつくろうとするのですが、 「あー、おまえさん!それはナデシコよ。掘っちゃ、ダメ!」
「アイゴー! それはツリガネニンジンよ。掘っちゃダメ!」
家の周りは花、花、花。お花が咲いていないところはありません。本当に大切なものは、自分のすぐそばにあることを、そっと気づかせてくれます。
文は韓国児童文学界の巨星、クォン・ジョンセン先生。絵はチョン・スンガクが描きました。ベストセラー絵本『こいぬのうんち』(第1回で紹介)の、あのコンビの作品で、『こいぬのうんち』がでた翌年の1997年に韓国で発売されました。約20年前の作品ですが、教科書に収録されるなど、今も多くの支持を得ている名作です。
わたしは、アナグマおばさんがはいている赤色の派手なモンペ(韓国語でモンペパジ)がとても気に入っています。よく見ると、動物の足跡のような模様が入っていて、なかなかおしゃれじゃないですか! モンペが、韓国の田舎のアジュンマたちの定番ファッションということで、画家もアナグマおばさんにはかせたのでしょう。
ところが、昨今、このモンペが涼しくて機能的なことに着目。若者もはける柄が登場して大流行しているのですよ。名前も、田舎臭い「モンペパジ」ではなく、まるで冷蔵庫(ネンジャンゴ)のなかのように涼しいということで、「ネンジャンゴパジ」という今風の名で呼ばれているのです。この夏、みなさんもネンジャンゴパジをはいてみてはいかが。
(2015.4.29 民団新聞)