掲載日 : [2021-10-13] 照会数 : 5573
ドキュメンタリー映画「ちょっと北朝鮮で」…北送日本人妻と60年ぶりの再会
「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん」は北韓で暮らす年老いた日本人妻と熊本県から会いに出かけた妹との約60年ぶりの邂逅(かいこう)を描いた社会派ドキュメンタリー映画。「北送」とはなんだったのか、「3年以内に帰ってこられる」という風説を信じ最愛の夫とともに北に渡った約1800人という日本人妻の存在をいま一度考えさせられる。
熊本県内で訪問介護の仕事をしている林恵子さん(70)は北韓で暮している姉、中本愛子さん(89)の消息を知らされる。映画を監督した島田陽磨さん(45、日本電波ニュース社デイレクター)が愛子さんの持っていた古い手紙を頼りに苦心の末に探し当てたのだ。
恵子さんは「北に拉致される」という周囲の反対の声を押し切って息子と一緒に2018年、北京経由で平壌入り。姉の住む韓半島北東部にある咸興を訪ねる。映画は2人の劇的な再開の様子を北韓の「日常の風景」とともに紹介する。「(北韓も)生身の人間が暮らす国」なのだと。
島田監督は「映画は政治と時代に翻弄された家族の物語。日本人妻は時代の空気に押し出された面もある。現代から断罪するのはおかしい」と強調。日本人妻の自由往来にむけ、人道的見地からの対話をと訴えた。
タイトルは、地理的には近いが、政治情勢から気楽に行き来はできない国を逆説的に表現したものだという。東京のポレポレ東中野で公開中。
(2021.10.13 民団新聞)